「そういえば、山下さんの担当決まりましたよ」

「え?お前らの誰かじゃないのか?」


俺が色々と考え込んでいると、あっと思い出したように大山が言った。


予想を否定するかのような言葉に、てっきり3人の誰かだろうと思っていた俺は驚いた。


「だって俺らチーム違いますもん」

「脳血管と体幹なんで」


……忘れていた。


そうだリハビリも専門性を持たせるためと言って、数チームに分かれていたんだ。


ということは……

「俺の担当って誰?井上?」


疑問に思って尋ねた。同期の井上辺りか?


そう思って尋ねると、香坂がムッとしたように答えた。


「めぐみさんは阻止しました」


そうか、井上は香坂が現在溺愛している彼女だった。


っていうか阻止したって何だよ。公私混同するなよ。


「だから、小川になりました」


そう淡々と告げた。


「……は?」


小川って、あの小川か?


「だからー、小川ですって。歳は俺らの1つ下ですけど、3年過程の俺らと違って大卒なんで、職歴は2年違いますけど。山下さんなら馬鹿なことしないだろうし」


「馬鹿なことって?」


ドキリとした。けれどそれを悟られないように、冷静を装った。


「リハスタッフの女性陣って、他部署から人気あるじゃないですか。その中でもモテる部類に入るから、時々アプローチされてるんですよ。ただ、みんな玉砕も玉砕ですけど」


誰かの事を思い出しているのか、笑いながら香坂が説明してくれた。


「間違って惚れても、あの子は落ちないから」


「“難攻不落の美女”って変な呼ばれ方しているくらいですし」


池田、大山と順に説明を付け足していた。