【完】白衣とお菓子といたずらと

「あ……、もうこんな時間なんですね」


彼女の視線が俺を通り越して、背後にある時計をみていた。つられて振り向いて時計を見ると、すでに10時を廻ったところだった。


気づかなかったけれど、随分と時間が経過していた。
って、大丈夫なのか?ふと、以前リハビリ中に話していた家族のことを思い出した。世間話をしていたときに、流れで話していた。


確か彼女は……

「早く帰らなくて大丈夫?実家暮らしじゃなかったっけ?」


そうだ。確か、姉妹も一緒に実家暮らししていると言っていたはずだ。こんな時間までここにいたらいくらいい大人だと言っても、家族は心配するんじゃないかと心配になった。


「あぁ、大丈夫ですよ。気にしなくても。今日は父しかいないし」


……って、え?それって尚更早く帰った方がいいんじゃないのか。そう感じるのは俺だけなのか。


「え?大丈夫なのそれ」


「はい、全く問題ないです」


まだ大丈夫って、いつまで彼女はいてくれるんだろう。俺はいつまででもいいんだけどな。


「じゃあ、泊まってく?」


問題ないならと、頭に浮かんだことが、つい零れてしまった。


……こんなこと、承諾されるわけないのに。冗談込みのつもりで言った。