【完】白衣とお菓子といたずらと

美沙が作ってくれたご飯はおいしかった。


俺の好きなメニューばかりだったのもあるけど。姉ちゃんが俺の好みに合わせて買ってきてくれていたんだろう。それにしても急にあんなにも手際よく料理できるものなんだろうか。


「……どうしました?」


いないと思っていた人から、しかもすぐ傍から声をかけられ驚いてしまった。


さっきまで、使用済みの食器を洗ってくれていたはずなのに。いつのまにか、俺の座っているソファの隣にきていた。


「すみません、驚かせて」


俺の反応に彼女の方が驚いていた。そして、申し訳なかったのか咄嗟に謝ってくれていた。


ボーっとしてた俺が悪いんだけどな。


「ごめん、ごめん。考え事してたら、美沙がそこに居るのに気づかなかったから」


「考え事ですか?」


俺の“考え事”という言葉が気になたらしい。首をかしげながら、そして隣に腰を下ろしながら尋ねてきた。


言っていいだろうか。俺の考えすぎだと思うけど。


「いや……」


少し言葉を濁してしまった。何か話そうとしているのに彼女は気づいたらしく、ただ黙って待ってくれている。


「俺の考えすぎかと思うんだよね。今日は姉ちゃんが色々買い物してきてくれたんだけど、妙に今の状況を予測していた気がしてならないんだよね。材料もご丁寧に1人分とは言えないしね」


今度は彼女はどこか悩んだような顔をする番だった。


あー、これは。俺の考えが正解かもしれない。彼女の反応が物語っている。








……きっと、彼女は何かを知っている。