高校3年の、秋だった。

夏が終わり、少し肌寒くなってきたころ。

その日は友達との約束があり、遠くまで出かけることになっていた。

わたしは心地よい電車の揺れとともに、待ち合わせ場所に向かっていた。



ある駅で、乗ってきた、老夫婦。

仲良く手を繋いでいる。

微笑ましいなー、と思いながら眺める。

空いてる座席は、わたしの隣と、向かいの席の一番端のふたつ。

老夫婦は、少し悩んだあと、手を話して空いてるふたつの席に座る。

わたしの隣におじいさん。

向かいの端の席におばあさん。


わたしは少しためらいつつ、席を立った。

と、全く同じタイミングで、席をたつ人。
おばあさんの隣に座ってた男性。

「『よかったら、どうぞ』」

わたしと男性の声が重なる。

おばあさんはにこっとして、わたしの座ってた席に座る。

そしてわたしは、おばあさんが座っていた一番端の席へ。

向かいの老夫婦はにこにこ。

わたしは隣の男性と目を合わせて、お互い照れ笑い。

なんだかとても心地よい時間だった。