「出会い」

空を見ていた。
「紫悠…。会いたいよ…。」
紫悠は幼い頃の男友達。
よく悩みを聞いてもらってた。
大切な存在。
いや、本当は恋してた。
紫悠に好きな子がいたから
言えなかったんだけど。
ある朝紫悠は姿を消した。
私のもとから消えていった。
今のクラスにはそんな友達がいない。
だから余計に紫悠に会いたくなる。
ふと、視線を落とした。
ボールがひとつ、
グランドに淋しくころがってる。
それは私の姿を映し出してるようで。
心を深く傷つける。

-もういいよ。
これが最近の私の口癖になっていた。
強がりだって分かってる。
本当はすごく弱いんだ。
偽りの自分でいつまでも生きてる。
本音をいってしまったら、
強がっていなかったら、
絶対に私じゃなくなってしまう。

「ガタンッ!!」
私意外に誰もいないはずの教室に
鈍い音が響いた。
「…ってーな。」
見ると、机にぶつかった男の子が
足を押さえてうずくまってる。
「あの、大丈夫ですか…?」
体が勝手に動いてた。
自分でもびっくりだ。
「あ、大丈夫。てか、何でいるの?」
彼は不思議そうな顔で私を見ている。
「空…見てました。」
なんて下手な言い訳。
悩みごとがあるなんて言えないし。
「なんかあったの?」
いきなり核心をつかれて、
少し戸惑った。
「無理に答えなくてもいいよ。
俺、沢山紫悠、よろしく。」
しゆう…?
「あっ…私、鳴海沙夜です。」
顔が火照ってく。
さっきから心臓がうるさい。
沢山君は一瞬驚いたような顔をした。
だけどすぐ笑顔にもどり、
「さや、よろしく。」
そう言い残して沢山君は
廊下の向こうに消えていった…。

あの紫悠…?
そうだよ、きっと。
涙が溢れた。
嬉し涙だよね、
私は慌てて袖でその雫を拭った。