だが、動かない。

びくともしない、
微動だにもしない。


これってヤバイんじゃないか?

そんなことを考えていると、
高崎は僕の両手首を片手で掴み、
上へと拘束する。

「おいおい…
はな…離してくれるか…」

ダメだ…
声が震える…
僕はがむしゃらになって
高崎を睨み付ける。

そんな僕を見ながら高崎は、
僕の耳に噛みついた。

「!?
やっ…
やめ…ろ……高崎……」

「空遥って言うまで離さねぇ…」

噛みつかれた僕は、
従うしかない…

ってか、
なんでひとの耳に噛みつくんだよ!?

吸血鬼か!!
ヴァンパイアか!?

ん?
あれは首もとだっけ?

「空遥…
良いから……離せ…」

すんなりと離してくれた空遥。
と思ったのは一瞬で…

「これからもそう呼べ。
それと、
俺は…俺たちは……
もっと強くなって…

もっと梓を守れる存在になる。
だからそのときは…」

「そのときは…?」

「いや…
何でもねぇ。」

顔を赤くしながら、
顔を背け、僕から降りる空遥。

「空遥。
僕は空遥の喧嘩を見たことないけど、
きっと空遥は、
今より強くなれるよ。」

すんなりと心から出た言葉だった。
僕が裏切りものだとしって、
粛正するために…

そのためにきっと強くなる。
強くなれる。