嗤うケダモノ


軽く舌打ちした由仁は、青ざめる日向の手を強く引いた。

彼女が簡易バリケードを築いたおかげで、あれ以上ドアが開かないようだ。

まだ間に合う…

だが由仁が日向の腰に腕を回した瞬間、つっかえ棒になっていた椅子が飛び、派手な音を立てて壁に叩きつけられた。

それと同時に、懸垂降下の命綱である上階に固定してあったザイルが、弾けたように断ち切れる。

窓枠に足をかけていたため、体勢を崩しながらもなんとか落下せずにすんだ由仁は、土足のまま部屋に入ってザイルの切り口をまじまじと眺めた。

そして、壁際にひっくり返った椅子を見て、日向を見て…


「ヤっベェ…」


震える声で呟いた。

うん。
ヤバいね。

囚人が増えたヨネ。


「俺、生まれて初めてガチモン見たよ。
テンション、まじヤベェ…」




ソコ─────??!!

いやいや、キモチはわかるケドも。

ヘッドランプ装備で探検しても ハーネス装備で探検しても、一度も会えなかったンだもんネ?

やっと夢が叶ったンだもんネ?

嬉しいキモチは痛いほどよくわかる、ケ ド も!!!