ソレ使って、入れないハズの廃屋に侵入しちゃったの?
それとも、峠にある死のカーブの崖を下りちゃったの?
手慣れてるもんネ。
心霊スポットマニアだもんネ。
日向は奥歯を噛みしめて、ツッコみたい気持ちを堪えた。
だって彼は気づいてない。
彼が廃病院探検中に助けたナマイキな小娘が、今、目の前にいる自分だというコトを…
「こんなトコロまで迎えに来てもらって、本当にスミマセン。
…
ありがとう、ございました…」
由仁の目を真っ直ぐに見つめた日向は、小さな声で呟いた。
素直になれなかったあの夜の分も上乗せして。
日向にとっては万感の思いを込めた謝辞だ。
彼にはわからないだろう。
いや、わからなくていい。
それでも、精一杯の思いを彼に…
「…
お礼はまだ早いンじゃナーイ?
逃げられてねーし?
俺にも役得あるし?」
「ハイ‥‥‥‥‥ ハイ?」
不意に妖しく笑った由仁を見て 日向は目を瞬かせた。
役得… って、ナンダ?
「おいで。
首に腕を回して、ギュウゥって抱きついてネ?
落ちたら大変だヨー。」
…ソレか。