暗示や催眠は万能ではない。

いくら思い込んでも空を飛んだりは出来ないし、自殺や殺人など、本能的にやりたくないコトにはブレーキがかかる。

本来なら、今回のように誰かを監禁するなどという、犯罪に触れるようなコトは無意識のうちに回避してしまうものなのだ。

社会的地位のある、アキの両親は特に。

なのに、現に日向は捕らえられている。
しようと思えば、いつでも警察に通報できる状態で。

ナニカがおかしい。
暗示にかかっているにしても、当然残っているはずの本人らの意図が全く感じられない。

別の人格を生み出してしまうような精神の病を発症するには、あまりに早すぎるし…


「ねぇ、ヒナ。
『クサイ』の他に、ナニか言ってた?」


『っ?! 違いマス!
ニ・オ・ウ!ですからっ!!』


由仁の言葉を、日向は力いっぱい否定した。

やっぱ結構余裕カモ。


『他は…ナワバリがなんとか?
キツネがなんとか?
やっぱり、コックリさんが原因だから…』


「んー… どーだろ?
ね、ヒナ。
とりあえず… 逃げよっか。」


『…


どーゆー意味ですか?』