「ヒナ…」


少し顔を上げて日向の桜色の耳朶を甘噛みしながら、由仁は掠れた声で言った。


「俺、必要ナイって言われても、追いかけるよ?
だから、もしも離れてしまっても、中間地点で必ず会える。」


もがいていた華奢な身体から、力が抜ける。

熱を持つ頬を、両手で包んで持ち上げて。
潤んでも尚、刺激的な強い光を放つ瞳を間近で見つめて。


「それが『俺たち』の予定調和だ。」


囁きの、口移し。

由仁は言葉を、思いを、唇に乗せて、日向の唇を塞いだ。

身体は二つ。
心も二つ。

決して一つにはならない。

けれど。

交わる吐息のように。
絡まる舌のように。

未来は交わり合って絡まり合って、一つのカタチを成すだろう。

縺れて、ほどかれて、離れて、また重なり合って。

たとえ不器用でも。

そしていつか、新たな未来を生み出す。

祝福されし命
繋がれし来世への螺旋

繰り返し
繰り返し

この世に生がある限り

聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな