母屋に忍び込んで。
階段を下りて。
ココは開かずの座敷牢の前。

カチリと金属音が鳴り、錠前は床に転がった。

スゲェよ。
ほんとにあっという間だよ。

ヤベェよ。
この男の将来に不安を感じるよ。

またもシリコンスプレーが活躍し、音もなく扉が開く。

限りなく犯罪クサい探検アイテムを携えた由仁と、二人分の靴を携えた日向は、口を開けた禁断の間に足を踏み入れた。

板張りの通路に面して、時代劇でお馴染みの木で出来た牢格子があり、その奥の6畳ほどのスペースには畳が敷かれている。

通路の隅には古い発電機や扇風機、ストーブなんかが置いてある。

やはり天井は低いが意外と広々としていて、孝司郎の言葉通り、決して粗悪な環境ではないようだった。

だが、孝司郎の言葉通りじゃないトコロも…


「キレーっスネー…」


日向が呟いた。


「だネー…」


由仁も呟いた。

長時間放ったらかしだったっつーなら、埃くらい積もってるハズだよネー。

やっぱり入ってやがったな。
掃除までしやがったな。

この嘘つきが!

腰を屈めた由仁と日向は、高低差のなくなった顔を見合わせて意味ありげに目配せした。