座敷牢には千鶴子に繋がるナニカがある。

もちろん、二度も孝司郎が入っているのだから、処分は完了してしまっただろう。

だが…

残っているような気がするのだ。
千鶴子の思いが。

見つけ出してあげなきゃ…

なんとか誰にも見つからずに母屋の裏口まで辿り着くと、由仁は日向の手を離し、オロビアンコのボディバッグからスプレー缶を取り出した。


「…
ナンスカ?ソレ。」


髪を揺らして首を傾げた日向が、小声で訊ねる。


「んー?
シリコンスプレーだよー。
ガタガタやってて見つかったら、探検終了になっちゃうでショー?
音が鳴らないように、扉の滑りをよくするの。」


ニコリと笑ってそうのたまった由仁が、敷居にスプレーを吹きかけた。



出たよ。
本気の探検アイテム。

てか、そんなモン旅行に持ってきてたの?!
ひょっとして常備してンの?!

ひょっとして…
ひょっとして…

このバカは…

日向はコワくて聞けなかった質問を、由仁にブツけてみるコトにした。

意を決して… ハイ、どーぞ。