「待たんか! バカモンが!」


またも突然空中に現れた空狐が 小さな足で由仁の顔面に蹴りを入れた。

由仁が仰け反り、箱に触れんとしていた指先が離れる。


「ナニコレ、カワイー…
ジン、知り合い?」


目を丸くした百合がやはり間違いリアクションをしているが、今回も空狐にはツッコむ余裕がナイ。

そして、由仁にはもっと余裕がナイ。
苛立たしげに髪を掻き上げ、空狐を睨みつけた。


「ナニすンの!
早くソレ壊してヒナを」


「壊しちゃいかん!
ヒナちゃんの心はコヤツの中に引っ張り込まれたンじゃ!
コヤツを壊せばヒナちゃんも」


「じゃ、どーすンの?!
どーやったらヒナは戻ンの?!
出し惜しみしねーで早く言って!!」


「よし、では死ね!」




ハイ?

由仁は片眉を吊り上げた。
百合はポカンと口を開けた。
部室に駆け込んできた樹は、目を瞬かせた。

ナニ言ってンの?大神狐サマ?

そりゃ、言い合いみたいになったケド。

『死ね』はサスガに大人げねーだろ。