「久我先輩…
痛い思いしたくなきゃ、黙ってていただけませんか?」


微笑みを浮かべて由仁を見据えたAくんが、穏やかに言った。

口調は丁寧だが明らかに脅迫。
そしてその笑みは、嘲りを滲ませている。

女みたいに綺麗な顔。
女みたいに白い肌。
背は高いが、女みたいに華奢な身体。

その気になりさえすれば、犯せてしまえそう。

『ペガサス』なんて呼ばれている目の前の男は、確実に自分より弱者だ。

年上とか年下とか、そんなコトは問題じゃない。
男の上下関係は、力の差に直結しているのだから。

強者が弱者を支配する。

要するに弱肉強食。

さぁ、どうする?
今すぐ強者に跪くか?

それとも、捩じ伏せられなきゃわからないか?

美しい草食動物の唇がゆっくり開く。


「えー…
イタいのはヤだナー…」


そうか、よしよし。
素直でイイコだな。

草食動物どころか、愛玩動物レベルの軟弱さじゃねェか…


「でも、黙ってるのはムリ。
俺、口軽いからー。」


傲岸不遜な態度で腕を組んだAくんに艶然と微笑みかけた由仁が、これまた傲岸不遜に顎を反らして言った。