嗤うケダモノ


今日はお弁当がない。

夜あまり眠れなくて、寝坊して遅刻ギリギリで家を飛び出したせいで、忘れてきた。

ごめん、オカーサン。

てなワケで、食堂で昼食。

湯気の立つラーメンを前に、日向は丁寧に手を合わせた。

ハイ、いっただっきまー…


「ひーなったっ!」


「ぉわっ?!」


背後からの、突然の抱擁。

って、ラーメンこぼすわっ!


「ちょ、吉岡先輩…」


背中にのしかかる重量に耐えながら、日向は困った顔で振り返った。

今日もカワイーねー、お人形さんみたいだねー、なんて日向の頬をつつくのは、吉岡百合だ。

日向がオカ研に入部して由仁とすごす時間が多くなり、必然的に彼女とも知り合った。

美人で、気さくで、可愛いモノを集めるのが趣味。
日向を見ると、コレクターの血が騒ぐらしい。

面白いキャラだ。

だが、さらに面白いキャラなのは…


「なんだ。
今日も一人か、一年女子。」


両手に持ったトレーをテーブルに置き、日向の前の席に座ったこの男、東堂樹。