「そしたら、さっきのセリフがよく似合う、隙のないイイ女になれると思うよ。」


後頭部を抱え寄せて、私の唇にトドメを‥‥‥


「コレで貸し借りナシねー。
じゃあね、可愛いバニーちゃん。
危ない男には気をつけなよー。」


軽く手を上げて、男は去った。

甘い香りを残して。
世にも妖しい笑みを残して。
マヌケ面で立ち尽くす私を残して‥‥‥

あ。
お礼言ってねーわ。

ん?
お礼はいらねーのか?

貸し借りナシだから。

貸しって… 借りって‥‥‥?



キスされたぁぁぁぁぁ?!
貞操救われた代わりに、ファーストキス奪われたぁぁぁぁぁ?!

遊んでる風だケド、ハジメテだったンだヨ?!

『ハジメテは誰もいない夕暮れの教室で☆』
なんてガラでもない夢を抱くオトメだったンだヨ?!

危ない男はオメェだよ!!

この、腐れケダモノめ───!!

なんてイライラを募らせ、数日間はゴハンも喉を通らなかった。
ブツブツ恨み言を吐きながら、体育座りで自室に籠った。

でもね?
ホントは気づいてたンだ。

ハジメテのキスと一緒に、心まで奪われてしまったコトを。