…
ナニソレ?
為す術ナシってか?
私は瞼を上げ、声がしていた方を睨みつけた。
ソコにいたのは…
白い髭。
黄色い頭巾。
海老茶色のちゃんちゃんこ…
ぬいぐるみサイズの黄門様???
「神様デスカ。」
私は訊ねた。
「いやいや、儂ゃ空狐じゃ。
随分前に天狐(テンコ)を引退して、今は隠居の身での。」
プチ黄門様が答えた。
隠居て。
空狐ってか、本気でご老公じゃねーかよ。
だが…
天狐といえば、1000年生きて神格化したという神獣だ。
その天狐がさらに2000年生きると、尾を持たない空狐に成るという。
妖狐の位においては天狐の下とされてはいるが、妖力自体は最上位である通力自在の大神狐…
「つまり、アンタが親玉じゃねーかっ!」
私は手を伸ばし、黄門様の襟首を引っ掴んだ。
隠居したとはいえ、相手は神。
だが、んなもん知ったコトか!
顔の前につまみ上げた空狐を、私は真正面から険しく睨んだ。



