嗤うケダモノ


私は大慌てで駆け寄り、フニャフニャと泣く綺麗な顔だちの赤ちゃんを抱き上げた。

生きた人間だ。

つまり、まだ獣に食われる前だったってコトだ。

だが、その中に尋常ではない気配を感じる。

つまり…
憑かれちゃったってコトだ…

九尾の狐って、自分で人に化けられるハズじゃない?
人に取り憑く必要ないハズじゃない?

しかもこの子、ポークビッツついてるヨ?
手術しなきゃ美女にはなれねー ヨ?

伝承って、ほんとアテにならねーな。

腕の中で大人しく抱かれる赤ちゃんが、時折白く光る。
あの神レベルの強大な気が、小さな身体に収まりきれずに暴れているのだ。

このままではこの子は…


(祓えるだろうか、私に…)


考えるまでもない。

無理に決まってんじゃーん☆

絶望的な気分で空を仰いだ私の視界に、ナニカが一瞬映り込んだ。

アレは‥‥‥ 鳥居。

朱塗りも所々剥がれ落ち、今にも朽ち果ててしまいそうだが、神社がある。

神仏のチカラを借りることが出来れば、あるいは…

私は死体も荷物も放ったらかして、スーツが濡れるのも気にせずにザブザブ小川を渡った。