嗤うケダモノ


白面金毛九尾狐

絶世の美女に化け、大国を滅ぼす霊獣。

目の前の獣が、その九尾の狐なのだろうか。

あまりの畏れに圧し潰されそうではあるが、伝承されているような邪悪な気は感じない。
穏やかな光を放つ金の瞳は、優しさを湛えているようにすら見える。

だが…

獣がふと足元の女に視線を落とした時、私は気づいた。

もしもこの女を殺したのがこの獣なら。
もしもこの女の腹を裂いたのがこの獣なら。

その口にくわえた小さな肉塊は‥‥‥

恐怖よりも激しい怒りに支配された私が鋭い眼差しを向けた途端、獣は光になった。


(逃がすか!)


私は素早く商売道具である護符を手にした。

勝てる気はしない。

だが‥‥‥ 絶対に許せない。

凝縮されていく光。
みるみる小さくなって…
ますます眩くなって…

ん?

逃げないみたい?
ナニやってンの?

一際眩い閃光に私が目を細めた直後、光の塊は小さな肉の塊と同化し…

ポテっと川原に落ちた。

どーなったの?
てか、ナニ?アレ。

…なーんだ、赤ちゃんじゃん。

‥‥‥赤ちゃんんんんん??!!