嗤うケダモノ


裂かれ‥‥‥?

裂──か──れ─────??!!

ナニコレ、ナニコレ?!

殺人事件?!
湯けむり殺人事件?!
美人霊能者が謎を解く、的な?!
人気が出たらシリーズ化、的なぁぁぁ?!

血塗れ幽霊は見慣れていても、血塗れ死体との遭遇は初体験。

暑さに狼狽が加算されて、変な汗を大量にかきながらキョロキョロと視線を彷徨わせていた私は、ピタリと動きを止めた。

いや、動きを止めたンじゃない。
身動きがとれない。

背中に、全く別の種類の冷たい汗が流れる。

さっき感じた気配が、傍に、いる‥‥‥


(‥‥‥‥‥クっソ‥‥
ナメんなよっ!)


根源的な畏怖を根性だけで捩じ伏せ、私は女の死体から視線を上げた。

そして、見た。

血に塗れたナニカをくわえた、白銀に輝く巨大な獣を。

美しい毛並み。
黄金色の瞳。
先に向かって、その瞳の色にグラデーションしていく九本の豊かな尾。


 獣有り
 其の状は狐の如くして九尾
 音は嬰児の如くして能く人を
 食う
 食す者は蠱せられず


私の脳裏に、中国の古文書『山海経』に記された文が過った。