日に日に暑さが増していき、いよいよ本格的な夏が近づいて来ていた。


私は来る日も来る日も、ウェイトレスとして走り回った。


こうしてただひたすら仕事をしていると、時々自分は何をやってるんだろうと思うことがある。


人生が漠然とこのまま進んでいくことに、不安を覚えてしまう。


仕事にやりがいがないわけじゃない。


手応えがないわけじゃない。


お客様と触れ合うのは楽しい。


だけど、私の人生ってなんだか彩りがないんだ。


それが何なのかは、わからないけれど。




そんなある日の午後のことだった。


ランチタイムが終わって休憩に入ろうとした時、レストランの扉が開いた。


「いらっしゃいま…、あ…」


「由梨ちゃん」


「……朝日さん」


朝日さんの部屋に行ってからそんなに日は経ってないのに、すごく久しぶりに会うような、そんな気がした。


「こんにちは、由梨ちゃん」


朝日さんの隣にいるありささんは、淡いピンクのワンピースが可憐で、今日もすごく綺麗だ。


「今日はどうされました?ランチタイムは終わりましたけど」


「今日は今から披露宴の打ち合わせなんだ。夏樹から聞いてない?」


うっ、そうなんだ。


社長ってば何も…。


「久遠を呼んでまいります。

おかけになってお待ちください」


二人にそう言って、私は社長室へと向かった。


扉の前で深呼吸をし、コンコンとノックをする。


「失礼します」


久しぶりの社長室に、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。


中に入ると、何やら書類を見ている社長の姿が目に入った。


「あの、椎名さんが来られました」


これだけの言葉を発しただけなのに、私の喉の奥は熱くなる。


「……わかった」


ぽつり落とされた言葉。


やっぱり社長は私の顔を見ない。


あの日縮んだと思った距離はあっけなく離されて、それ以前よりももっと遠くなってしまった。


下唇を噛んで、黙って扉を閉めようとしたその時。


「水沢」


低い声にドクンと心臓が波打つ。


「……はい」


久しぶりに社長と視線が絡んで、私はフリーズしたパソコンのようになってしまう。


「お前も同席しろ」


「は?」


え、えぇぇ~~~?