My sweet lover

しばらく社長は無言でワインを飲み続け、気がつけば一本空けてしまう始末で。


私は仕事の疲れもあって、ただただ眠くてうとうとしていた。


「水沢ー」


「はい、なんでしょう」


「ふっ、呼んだだけー」


コ、コイツ。


社長でなかったら、一発殴るのに。


「お前、イタリア行ったことあるかー?」


「ありませんよ。海外なんて一度も行ったことないです」


「イタリアの男ってなー。女の人を見ると必ず話しかけるんだぞー。

お前、イタリア行けよー。

男に優しくしてもらえるぞー」


何それ?


自分がモテるからって、人の事バカにしてるの?


ホントむかつくこの社長。


「まぁでもさー。

いい国だよー。

俺は好きだ」


好きだ、か…。


好きって言葉は、いいよね。


一生言われることも、言うこともなかったりして…。


さみしいな、私の人生。


「イタリアはなー、南がオススメだー。

シチリアはいいぞー。

バーリやナポリもいい。

美しい街だー」


「へぇー、そうなんですか」


ね、眠い…。


意識が朦朧としてくる。


「イタリアの地中海の景色を、時々見たくなるんだ。

すごく、綺麗な海でさ……。

……の……がさ、……を食べながら……」


行ったことのない国の話を延々とする社長の低い声が子守歌に聴こえて、


私は次第に深い眠りの世界へといざなわれてしまったのだった。