「俺が怖いか…?」


どうしよう。


マジで嫌われていたら…。


「嫌いになった…?」


そんなの、耐えられない…。


由梨はうつむいたまま、首を横に振った。


「じゃあ、俺と帰ってくれる?」


俺の問いに、由梨はコクンと頷いた。


「良かった…」


思わず由梨を片手で抱き寄せた。


由梨が震えながら泣いている。


「…ごめんな」


あんな迫り方をして。


もう絶対にしない…。


しばらく抱きしめていたら、ひどく人の視線を感じた。


あ…。


やべぇ。


完全にその存在を忘れていた。


「あの…、まさか…水沢の彼氏って…」


もうこうなったら言い訳のしようもないよな。


「あぁ、そうだよ」


ため息混じりに答えてみれば。


「えーーーっ!」


ひっくり返りそうな勢いで驚く林。


まぁ、無理もないよな。

 
「お前、誰にも言うなよ。言ったらどうなるかわかってるだろうな?」


「い、言いませんっ。絶対言いません。安心してください。

社長と付き合ってるのに口説こうとして、すみませんでした!」


頭を地面に着けて謝る姿に、思わずクスッと笑ってしまった。


こういう真面目なところが可愛いよな、林は。


「いいよ。こっちこそ迷惑かけたな」 


俺の言葉に林が頭を上げた。


「帰ろうか。お前も送ってやるよ」


そう言うと、林はホッとしたように笑顔になった。


「あ、ありがとうございます」