My sweet lover

“最後”と言われて、胸がチクリと痛む。


そうだよね。


引っ越したら、もう二度とここへ来る事はないんだもんね。


「いつ、出発する?」


社長が夜景を見ながら、静かに言った。


「明日、朝日さんが仕事帰りに迎えに来るそうです。

私、明日は仕事が休みなので、社長が留守の間に出発すると思います。

荷物は明日荷造りをして、後日業者にお願いするつもりです」


私の言葉に社長はそうか、とだけ言った。


私と社長は、しばらく黙って夜景を眺めた。


行き交う車の光がゆらめいて、とても綺麗だ。

 
「このまま突っ立ってるのも変だよな。何か飲む?」


「そうですね。

あ、でもその前にシャワー浴びて来たいです。仕事で汗かいてるので」


「それもそうだな。先、入っていいよ」


「ありがとうございます。じゃあお先に」


私はそう言って、先にシャワーを浴びさせてもらった。


私がシャワーから出ると、すぐに社長もお風呂へと向かった。


私はさっきと同様、窓の近くに行って夜景を眺めた。


なぜかふぅとため息が出る。


あんなにイヤだった引越しだったのに、いざここから出ると思うと、さみしくなるのはどうしてなんだろう…。