そんな社長の思いを知った数日後。


なかなか寝付けない私は、飲み物を取りにリビングへと向かった。


カチャンとリビングの扉を開けると、社長がソファにゴロンと寝転んでいた。


「あ、ごめんなさい。ちょっと飲み物をとらせていただきますね」


そう言って、急ぎ足でキッチンへと向かった。


「何飲むの?」


社長が寝転んだまま、私を見て言った。


「眠れないので、ハーブティーでも飲もうかと…」


私は棚からハーブティーのティーバッグを取り出した。


「俺も眠れないんだ。一緒に作ってくれる?」


「もちろんいいですよ」


私はお湯を沸かし、マグカップを二つ用意した。


カモマイル、アップル、ハイビスカス、ローズヒップなどがブレンドされたこのハーブティーは、とても良い香りがする。


しっかり色が出たので、私はマグカップを持ってリビングへと向かった。


「どうぞ」


社長に差し出すと、社長は起き上がってマグカップを手にした。


「お、いい香りだな」


社長がハーブティーを口にする。


ゴクンと鳴る喉の音が、シンとしたリビングに響き渡った。


「社…じゃない、夏樹さんも眠れないんですか?」


私は床に直接座りながら言った。


「あぁ…。新メニューの事とか売上の事考えてると止まらなくて、頭が休まらないんだ」


そうだよね。


社長ってお店の全体を見てないといけないし、大変な仕事なんだろうな…。


「お前はどう?仕事は慣れた?大変だったりしないか?」


急に質問攻めにされて、少し戸惑ってしまう。


「あ、はい。大変ですけど、充実してますよ」


私がそう言うと、社長はそうかとだけ言って、またハーブティーを口にした。