風の音が聞こえる。
温かな、春の風。
すずらんの香りが、俺の鼻をくすぐって、懐かしく思えた。
─────サァァ…。
「あっ……」
破れているノート。
未来予想図のページが、風にのってひらひらと飛んでいく。
そして、
子供たちに囲まれている女性のもとへと、ゆっくりと落ちた。
その女性は、しゃがみこんで、破れたそのページを拾ってくれた。
俺はまるで、導かれるように、その女性のもとへと向かう。
懐かしい感覚。
昔もあった……君のピアノの音に導かれて……。
────風が、ノートを君のもとへと導かせる。
それにつられるように、俺も導かれる。


