俺は、手に持っていたノートを開いた。
風に乗って、パラパラとめくれていくノート。
1ページずつ……
あの頃の彼女の想いが、今ここに。
「……そのノートは?」
横にいる鈴音ちゃんのお母さんは、俺のノートを見て聞いてきた。
…………なんと言えばいいのだろう。
分からないけど……。
「俺の大切な人の、ノートです」
そう言った。
「そう……素敵なノートね」
この色あせたノートを、なぜ素敵と思えたのか……
俺には分からない。
けれど、鈴音ちゃんのお母さんは、
自分の想いを言葉にして、伝えてくれた。
だから、
「ありがとうございます」
俺も感謝の想いを、言葉として伝えれた。


