「優くん……。今、花音は、妻の仏壇の部屋にいる。
ついて来てくれるかい?」
お父さんは俺にそう言ってきた。
「はい……」
そして俺は、おばあさんのもとから立ち上がり、花音のお父さんについて行った。
「あの子は一度、母を失っている。
人を亡くすということには敏感だ……。
そのときは、おばあさんが支えてくれたが……。
今回は1人で、そのおばあさんの死を看取った」
そう、花音は1人だったんだ。
そんな中、生きる希望を……失くしたんだ。
「…………っ!」
ごめんな。花音。
そして、部屋の前に立つ。
「花音……入るぞ?」
そう言って、お父さんはその部屋の襖(ふすま)を開けた。


