「……辛いことは、あんまり1人で抱え込むなよ?
俺に言え!
花音を支えるために、俺はいるんだから」
そう強く言った優くんは、つまんでいた手を離した。
鼻がヒリヒリと少し痛むけど、心は温かくて。
お母さん。
優くんには、言ってもいいですか?
私は、お父さんが怖いということ。
「優くん…。あのね。
昨日、おばあちゃんから言われたの。
お父さんから、電話があったって」
「えっ……」
私の言葉に、驚きを隠せない優くん。
「会いにくるかもしれない…。
私、怖くて……。
どうしていいのか、分からない」
「花音……」
「お父さんに会って、また怖くなって、声を失うかもしれない。
あの時の思い出が……っ!!」
ずっと、こだまする。
お父さんのあの低い声。
『お前なんかいらない』
私の頭を支配する。


