【完】君ノート






でも……。



私は一度も笑うことなく、お母さんは事故で、還らぬ人になった。


お母さんの言葉を聞いてなかった私。




その頃の私の姿は……。


花のように強くて、幸せを運ぶ音のように。


そんなのではなかった。




なにもかも失って、

心も音も空っぽの……抜け殻。


〝花音〟じゃなかった。






『花音、笑って』





お母さん……。


お母さんのお願い、聞いてあげれなくてごめんね。




私、今なら笑えるんだよ。




優くんが、私を幸せにしてくれるの。




「おばあちゃん……。
私、あの頃お母さんに笑えてなかった……」



「後悔してるのかい?」



その言葉に、コクッとうなずく。





「……じゃあ、今からでもいい。

たくさん笑って。
奏に花音ちゃんの素敵な笑顔を見せてあげて。
あの子は空の上から、花音ちゃんを見守ってるから…」



「うん……」




お母さん。


私、名前のとおり強くなりたい。



でもやっぱり……

お父さんに会う勇気はでないよ…。


怖がりで…弱くて…ごめんね?