「花のように……強く。
音にのせて、幸せを運ぶ……。

それが、花音ちゃんの由来」



「……私…の……?」



「素敵な名前ね。
花音ちゃんの存在が、奏にとって、どれだけ大きなものか…知ってた?」



私の存在なんて、意味ないと思ってた。

お母さんとお父さんをつなぎとめることもできなくって。

私は、無力な人間だと思った。






お母さんとの思い出なんて、すごく少ない。


数ある記憶を、必死に思い出す。




『花音ー!危ないから戻っておいでー』


明るくて…。


『あーあ。コケちゃった…。
泣かないのー!』


優しくて…。


『花音はお母さんの、自慢子供だよ?
優しくて、強い子になって?』


私を想ってくれる、お母さん。





『花音……笑って?』




お父さんと離れて、声を失くした私。

絶望の中にいる私に。




お母さんは、何度も何度も……




「花音、笑って」



そう言った。