「声が戻ったら、優くん言わなきゃって思ってた……」
いつもと様子が違う。
俺は、しぼりだすように声を出す花音のもとへと歩み寄った。
そして、かすかに震えてるその手を取り、ギュッと握った。
「花音…。無理するな」
「無理してない。
話したいの。優くんに……」
俺を見て強く言い放った。
「……でも、震えてる」
「優くんだから…大丈夫。
……聞いてほしい」
彼女が勇気を出して、なにかを伝えようとしている。
俺はただ震えてる手を握って、うなずくことしかできなかった。
花音の話を聞いてやることしかできない。
それなのに、花音は笑って
「ありがとう」
そう言ってくれた。


