【完】君ノート





電車が到着すると、優くんは私の手を繋いだまま、真っ先に降りる。




「花音!家、どっち?」



そう聞いてきた優くんに私はノートを持ってる方の手で、家の方向を指差した。



「ん。分かった。走るよ」



そして優くんは、私の手をひいたまま走り出した。





まただ。



優くんはいつも、こんな風に助けてくれる。



暗くて狭い世界から、私を連れ出してくれるんだ。






夏の暑さなんて忘れてしまうほど、走ることに必死で…。



優くんのひいてくれる手が力強くて、



私から見える優くんの後ろ姿はかっこよかったの。