『…花音。泣くな?俺がいるから。
落ち着いて聞いて?
今、電話してるってことは、家にいるんだよな?
俺、今、夏期講習が終わったから学校からこのまま駅まで行く。
花音も、今からそこまで来れるか?
んでそこで、ノートで何があったか俺に教えて?』
………どうして。
声がなくても、私のことを分かってくれるの?
私は、誰かが見てるわけでもないのにコクッと頷いた。
『待ってる。
走って行くから!』
そう言うと、優くんは電話を切った。
私も受話器を置き、滲んでいる文字が書いてあるノートを閉じた。
それを手に持ったまま、もう一度おばあちゃんのもとへ駆け寄る。
〝おばあちゃん、すぐに戻って来るから待っててね〟
どうか無事でいて。
そう願いながら、おばあちゃんの手を握る。
そして私は急いで玄関を飛び出した。
急いで、走って、優くんのもとへ行く。
優くんも走って迎えに来てくれるから、
優くんが助けてくれるから。


