そのドキドキの正体がなんなのかは分からないけど、陽乃のその気持ちを嬉しいと思う自分がいる。


このドキドキは、何なんだ?


どうして俺は、陽乃の気持ちを知ってこんなにも嬉しいと思っているんだろう。


なぁ……教えてくれよ。


陽乃のことを思い出すと、左胸の辺りがチクンと鈍く痛んだ。


もしかして、俺………。


「優ちゃん」


もう少しで大事なことに気付けそうだったのに、俺の思考は透き通ったキレイな声に遮られた。


ゆっくりと視線を下に落とせば、どことなく寂しそうに微笑んでいる百合と目が合う。


その笑顔は、俺と付き合う前の、無理をして笑っていた百合を思い出させた。


「優ちゃん……」

「………ごめん」


小さな声で呟かれた俺の名前。


思わず口から出た俺の謝罪の言葉に、百合は“違うの”と首を横に振った。


「え……?」

「そうじゃないの。私、優ちゃんに謝ってほしいわけじゃない」

「……どういう意味?」

「ねぇ、優ちゃん。私たち、別れよう」

「……は?」


思いもしなかった突然の別れの言葉に、俺は耳を疑う。