あの夜以降、俺はアキのことが好きだと思うようになった。
雷の夜、俺とアキだけの秘密の昔話。

涙を一筋流すアキの両頬に手を添えて俺はもっと泣いていた。


早く見つけてやれなくてごめん。
思いがだんだんと高まり、
やがて恋情へと発展する。


おずおずと出された手を取って、不安気に震えるアキの手の感触は未だに色褪せない。

俺の手を取ったお前の思いが偽りだと知っていた。
それでも俺はお前を愛していたんだ。
涙を流すお前が、愛しいと思ったんだ。

お前の思いが偽りでも
俺はお前を愛してるよ。
俺がお前を守るよ。

だからせめて、俺の横でだけでも
安らかに眠ってほしい。

「柴田ー、7番テーブル指名だよ!」
「はい、今行きます」

俺の大嫌いなゴテゴテしい装飾のネクタイを多少緩めに締めて
照明とシャンデリアが輝く
薄っぺらい女の世界へと
愛する男を思い、歩んで行った。


俺の夜勤先は、女性向け風俗店。
所謂、ホストクラブである。