団子と茶を平らげて茶屋から出た瞬間、僕は走ってきた人物と衝突して地面に尻餅をついた。
「痛っ……」
「涼介、大丈夫?君、よく地面に転がるね。」
紅陽は笑いながら僕の腕を掴む。
好き好んで転がっているわけではないと紅陽を睨む。
紅陽は悪びれた様子もなく、衝突してきた人物に声をかける。
「君も大丈夫かい?」
「あ、はい。ごめんなさい。」
少女は立ち上がり、頭を下げた。
「私の不注意です。」
背丈は僕よりも低く、腰まである艶のある黒髪。
透き通るような白い肌。
どう見ても育ちの良さが分かる。
到底こんな田舎町に住んでいるようには思えない。
「あの、お怪我はございませんでしたか?」
「別に大丈夫。」
そう答えれば少女はホッと胸をなで下ろした。
「それより何か急いでたんじゃないのか?」
少女はハッとした表情になり、辺りを見回した。
「やっと見つけましたぞ、姫様!」
それは少女の後ろから。
よく通る嗄れた声が聞こえてきた。
少女は恐る恐る振り向く。


