結局、姫様の言い分が通ったようで老人は肩を落として諦めた。


「では、改めてよろしくお願いするわね。ええっと……」
「紅陽と言います。こっちは涼介。」
「そう。私は紗良(サラ)って言うの。」
「では紗良姫、どこへ参りましょう?」


姫様は目を輝かせて身を乗り出した。


「桜並木をね、見てみたいのよ!」
「承知しました。この村の外れに桜並木がございました、そちらで宜しいですか?」


紅陽の提案に姫様は大きく頷いた。


「早く行きましょう!それから、紗良でいいわよ。」
「何を仰いますか、姫様!気安く名前を呼ばせるなど」
「もう!爺は黙ってて!」


べーっと紗良は舌を出す。


「ああ、はしたない……。」


老人は見ていられないと顔を覆った。


僕はそっと肩に手を置いた。


「そんな気落とすなよ。」
「御主にワシの気持ちなど分かるものか。」


憤慨する老人の事など気にもせず、紗良は前を駆けていく。

僕たちはそのあとを慌てて追いかけた。