「俺がそのお姫様を護衛いたします。」
紅陽はにこにこと笑いながら、腰の刀に手を当てた。
「見ての通り俺は侍です。腕は保証しますよ。」
「何の利点があって、姫様の護衛をすると言うのじゃ?」
老人は怪しむように紅陽を見る。
「そうだなぁ。うん、お姫様を無事城まで送り届けたなら、少しの褒美をいただけませんか?」
「褒美じゃと?」
「ええ、ここにいる」
と、紅陽は僕の肩に手を置いた。
「この子に新しい着物を仕立ててもらいたい。」
「え……」
僕は瞠目して紅陽を見た。
「いかがでしょうか?姫様」
「ええ、もちろんです。あなたを私の護衛として雇いましょう。」
姫様は目をキラキラと輝かせて紅陽の提案をのんだ。
「ひ、姫様!何をご勝手に!!」
「もう良いじゃない!一人で出歩こうって言ってるわけじゃないんだから!」
老人の説得など姫様は聞く気はないらしい。
僕は隣に立つ紅陽を見上げた。
「紅陽……さっきの…」
「ん?ああ、褒美のことかい?」
「どうせなら自分の欲しいものにすれば良かったのに。僕なんかの事、気にせずに。」
「いいんだよ。俺には欲しいモノなんてないから。敢えて言うなら涼介の新しい着物が欲しかったんだよ。」
と、紅陽は僕の頭を撫でた。
「こ、子供扱いすんなよ。」
「え?あ、ごめん、ごめん。」
口では言ってみたけど、笑う紅陽の手を払うことは出来なかった。


