蒸発島


「どうだか」
「まあ、――それが僕の仕事だしさ」
「――え?」

 瑠璃はとても小さな声で“それが僕の仕事”だと言った。
 消えてしまいそうな声だったから、聞き逃すところだった。

「仕事って……」

 瑠璃の方を見た。――けれど彼女の姿はもうどこにもなかった。

 いつもそう。突然現れて、突然消えていく。
 訊きたいことも、話したいことも、もっといっぱいあったのに。
 彼女には、誰かと話そうという気持ちがないのだ――。