蒸発島


「君はまだ若いんだよ。
 ――僕は君がここに来る何年も前から鳩羽と一緒に居る。だから君も僕達と長年ここに居たら――嫌でも分かるさ」
「私はもうすぐ傷が癒える。治ったら黄泉に行くのだ。瑠璃達とここに居るつもりはない」

 瑠璃はまた笑った。
「何故笑う?」
「無駄な期待はしない方がいい。君は能力を持っている。そう簡単に黄泉には行けないよ」
「私の意志はどうなる? ……ここは自由な場所じゃなかったのか?」
「自由さ。能力を持たない人は、ね。
 利用価値がないから放任されているだけだよ」

 瑠璃は冷たく言った。
 しかしそれは能力ある自分を誇りに思っているからではない。きっと――客観的に見てそう思ったから、そのまま言っただけなのだろう。