「私は知らないことだらけだな。誰も教えてはくれない、自分で調べる術もない……。
彼は何を考えている?」
瑠璃はふふんと鼻で笑った。余裕があるのか、全てを諦めているのか、どちらとも言い難い表情だ。
「簡単だよ。鳩羽は人間が好きなんだよ」
「そうは見えない」
「だって君を現世に行かせる理由がそれ以外に何がある?
人間は幽霊が嫌いだ。――つまり僕達みたいに死んだにも関わらず現世を彷徨っている者のことだよ、そう、僕達は幽霊なんだよ。ははっ、僕、何度も絵本で読んだな。幽霊は淋しがり屋だって絵本だよ、知ってる?」
「知らない……」
瑠璃は生きていた頃、よく本を読んでいたらしい。年は……分からないけれど、小学校中高年ぐらい。私よりも少し年上なのは間違いない。
彼女は全てを諦めている。黄泉に行くことをちっとも怖がっていない。寧ろ破滅願望があると言える。そんな彼女だからこそ、時々恐ろしいことを平気な顔して言う。人間に恨みを持っているのかいないのか定かではないが、世界が滅べばいいとか、全てが消滅すればいいとか……。何をするにも、哀しいぐらいに諦めているのだ――。
