しばらくドアの前で悩んでいたが、埒が明かない。廊下を探索してみることにした。
幾つかの角を曲がり、勘で真っ直ぐ行ってみたりする。廊下には二藍どころか人一人居ない。
普通は、隣や気が合う人の病室に遊びに行ったりしないだろうか? 毎日同じ病室の人と居ても飽きるだろうし、話もいずれ尽きるだろう。それなら、色んな人と話して、たくさんの人と交流を深めた方が退屈しないと思うのだけれど……。
考えれば考えるほどに不自然な所だ。
病室へはスライド式のドアで区切られているが、どの部屋からも声が聞こえない。話し声や笑い声、怒鳴り声も何も。
ここにきて二藍への疑心が再び湧いてきた。もしかしたらここには誰もいないのではないか。人の気配が全く無いのだ。私以外、誰も居ない。
