蒸発島


 どうしたらいいのだろう。
 右も左も分からない。待っていたら二藍が迎えに来てくれる可能性もあるけれど、こんな所でじっとしているのも嫌だ。
 適当に病室を選び、入ってみるという手もある。もし親切な人が居たら、道を訊くか一緒に居てもらうかして……。普段からお喋りをして暇を潰しているような人達だし、陽気で気さくな人が多いだろう。

 右手のドアに手をかけ、ぐっと力を入れる。
 
 だが待て……。皆が皆二藍のような形をしているとは限らない。病気や怪我で入院しているのだ。何を見ても驚かないという自信は無い。もしかしたら彼等を傷つけてしまうかもしれない。

 ドアにかけた手を離した。