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少し眠ってしまったようだ。
辺りは相変わらず同じ病室が続いているだけだけれど、体の怠さは多少マシになったようだ。
疲れていたのかもしれない。急激な日常の変化に耐えかねて――、と言っても、
(まさか自分がこんな見知らぬ場所で寝てしまうような図太い神経の持ち主だったとはね……)
「あれ?」
違和感。辺りをよく見る。
――二藍が居ない。私のかけた声が届かなかったのかもしれない。こんな所で一人きり……。
「二藍ー!」
腹の底から声を出して呼んでみたが、私の声は壁の無い何処までも続いていそうな空間に虚しく消えていくだけだった。
