「二藍は優しいね。大丈夫だよ。怖くない。
それより、私に会いたがっている人が居るんでしょ? 早く行こう」
それは確信に近い何かがあった。
私に会いたがるような人なんて、お婆ちゃんぐらいしか居ない。好きだった人だから、怖さも然程ないし、寧ろ嬉しいぐらいだった。
蒸発島に来たばかりの時は怖くて仕方が無かったのに、とつい先ほどまでの自分に対して笑う余裕まで出来ていた。私は結構逆行に強いのかもしれない。
二藍は嬉しそうな顔をした。彼女の嬉しそうな顔はとても可愛くて、愛らしくて、温かかった。
二藍は再び泳ぎだした。泳ぐといっても、ほぼ歩いているのと変わらない。重力のない場所のように、ふわふわ移動するのだ。
幾つもの交差点を曲がった。
機械的な造りで、交差点がたくさんあり、三つ目の交差点を曲がった時にはもう、最初に居た所がどこだか分からなくなっていた。
