どうしてかこれ以上謝ってほしくなくて雪岡の言葉を遮り、行くよ、と手を引っ張って歩き出せば、今度は抵抗されることもなく雪岡からは「うん」という嬉しそうな返事が返ってくる。
「えへへ」
「……何笑ってんだよ」
「ごめんね。……やっぱりすきだよ」
「……」
「えへへ」
幸せそうな雪岡に、俺の方が恥ずかしくなる。
いつもはどこかおびえたように俺のことを見るから、こんなふうに柔らかい雰囲気で一緒にいてくれるなんて初めてで。
……おびえられる、なんて自業自得なのにな。
駅に着いて、電車に乗って、そして自宅の最寄り駅の改札を出るまでずっと、雪岡はその幸せそうな柔らかい雰囲気のままだった。
駅を出てすぐのところにある小さな公園の前で、雪岡が「ここでいいよ」とにっこり笑ってつないでいた手を離してようやく、掌から伝わってきた温かさを心地良く感じていたことに気付く。


