雪岡の言葉に、しっかり繋がれた手に思わず視線を落とした。


繋がれた、っていうよりは、俺が一方的に握ってるだけか……。


送っていくだけならわざわざ手をつなぐ必要なんてない。


つーか今つないでるのだって吉倉が握らせてきただけで、俺が自分から繋ぎたいとか思ってるわけじゃないし……。


学校の奴らに見られて、根も葉もない噂を流されても面倒だしな。


吉倉は、きっとこのまま帰れと言う意味で握らせてきたのだろうが、雪岡も戸惑ってるみたいだし離してもいいか。


「……じゃあ離」


「うれしい」


じゃあ離すわ、そう言おうとしたのに。


雪岡の方に顔を向けて目に飛び込んできたのは、彼女のはにかんだ笑顔だった。


『うれしい』


その言葉を表情でも充分表しているような、幸せそうな顔。


さっきまでは一方的に俺が握っていただけの手が、キュッと握り返されて、温もりが増した。



「……手、つなぐの、うれしい」


「……」