「……そんな怖がらなくても、何もしねーよ」


驚いて身体をはねさせた私を怖さにおびえていると思ったらしい水無月くんは、視線を逸らしたまま苦笑した。


「こ、怖がってるわけじゃなくて……!ただ、驚いただけです……」


「……別に、どっちでもいいよ。
……雪岡、当日クラスのシフトどうなってんの?適当にこっちの当番いれちゃっていい?」


弁解しようとなんとか言葉を紡いでも、水無月くんはどうでもいいことのように流してしまう。


そんな素っ気ない言葉を痛いと思うのは、私が弱いからなのかな。


好きな人の言葉だと思うからなのかな……。



「……特に都合の悪い時間とかはないです。クラスにはカフェの方を優先させて貰うように言ってあるから」


「じゃあ遠慮なくシフト入れさせてもらうわ」


そう言って、水無月くんは紙にスラスラとペンを走らせた。


骨ばった手。


ペンを握っているせいで、いつもよりそう思う。