「もう帰るから、行きましょう?」
「え、あ、悪い……、ぼーっとしてた」
「水無月くん早く出てー、水無月くん出てくれないとあたしも出られないー」
「悪かったって!今出るから!」
雪岡とは逆隣に座っていた女子にも催促されて、慌てて荷物を持ち、席を立った。
もうほとんどのメンバーは会計を済ませて入口のところに集まっていた。
あと残っているのは、雪岡と俺、そして催促してきた女子。
俺が席を立つと、その女子も財布片手にさっさとレジの方に向かっていった。
そして俺もその後に続こうとした。
……のに。
「待って」
急に強く腕を掴まれ、立ち止まるしかなかった。
掴んできた雪岡を見れば、思った以上に至近距離で目が合う。
それが彼女に引っ張られて身体を屈ませている状態だからだと気付くまで、一瞬以上の時間がかかった。


